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ひっそりこそり

短歌研究新人賞に応募した作品

短歌研究新人賞に応募してました。

 

 

結果は予選通過という、参加賞(くらいのものであるらしい)だったのですが、自分の歌が誰かに選ばれて紙面に掲載されるのは初めてなのでうれしい気持ちでいます。今度はもっとよりよい作品を作りたい……!そんな気持ちにさせられました。

 

というわけで(?)、このブログに応募した作品をアップしておきたいと思ったので、アップします。

 

↓ここから作品

 

「Long Wrong Life」

 

あの頃はともに生きてくはずだったイヤホン越しに聞こえた吐息

 

Long Wrong Life ぼんやりとしていればぼんやりと過ぎてゆくだけ

 

祈るような気持ちで自販機 温かいミルクティーのボタン押す

 

花言葉のように生きていられたら この腕で体を抱きしめる

 

寝落ちしてイヤホンから聞こえてくるあなたの呼吸のぬくい湿度

 

あの日々はおたがいさまと思ってたつりあってない天秤の揺れ

 

少しでもあなたの気持ち知りたくてアークロイヤルアップルミント

 

心臓に冷たい水が落ちていくこの感覚はいつぶりだろう

 

お互いに黙ったままの冷たさはドライアイスで火傷する指

 

咀嚼して飲み込んでいくクラッカーいろんな道がなかったことに

 

生煮えの気持ちは消化すらされずうらみごとがあふれてくるね

 

ぼんやりとふとんにもぐり寝るときの二酸化炭素濃度の高さ

 

蝶々のような眠気をつかみとり鱗粉を吸い落ちる暗闇

 

お互いにたいせつ壊しあった日のぬるいライチのほのかな苦み

 

スプーン一杯の贖罪すらもはねのけられて飲むポタージュ

 

傷つけるためにつかう悪口であなたはどう傷ついたのだろう

 

どのような重さの石を投げたなら当たる人らは痛くないのか

 

さまざまな角度で徐々にずれてってもう取り返しつかないですね

 

こんな気持ちになんてなりたくなかった(だけどもう)白鳥の死体

 

名前すらつけられなかった事件でもガラスとガラス擦れあう痛み

 

クレッシェンド あなたは遠くなり光の速さになってしまった

 

飛ぶ鳥は跡を濁さず 見あげると燕が作った燕の住処

 

「いつものカレー」余ったからタッパーへ 皮むき損ね指先の赤

 

治癒せずに残る傷跡なでながらこんな気持ちもあったのだろう

 

コロッケの大切さに気づかずにこれからも生きていくんだろうな

 

どうしてか怒りはふいに消えていき許せなさの足跡が残る

 

あざやかに赤や黄色が流れてく川の水面は他人事のよう

 

遠回りして歩くとき特有の 温度 湿り気 呼吸のリズム

 

死ぬ光すべてなかったことになる波打ちぎわに素足をさらす

 

そうすべてはうつろいゆくものだから煙とともに吐く息の白