いちごつみまとめ第四期
荒地識(Twitter→@arechishiki)さんと短歌でいちごつみをやりました。下の記事が第三期へのリンクになっています。
50首になったので、一区切りをつけていちごつみ第四期としてブログに公開することにしました。ネットプリントとしても登録する予定です。
2019/12/04にはじまって2020/06/01までやってたので、約7か月やっていました。月日が過ぎるのは早いですね。奇数番が荒地識さんで、偶数が私です。
01:願いごとすべてはきみが五階から飛ばした鳩の数だけ叶う
02:願わくば蟻を一度も踏み潰すことなく生を終えていきたい
03:足元の蟻を砂糖で埋めてゆくやさしい地獄ここにあります
04:かみさまは砂糖と塩の割合が完璧すぎるパンを作れる
05:小匙一、塩を加えてつくられた誰もすまない色のない海
06:誰も住まなくなってから長い家そろそろ燃やしてもいいですか?
07:あかあかと落ち葉燃やして銀色が煤けてしまう様を見守る
08:サクサクと落ち葉踏みつけ音鳴らしあなたを刺した日を思い出す
09:床に臥す母がいたのだサクサクとあなたが殺す霜柱には
10:こわれたらもう戻れないものだから二度と踏みつけるな霜柱
11:もう二度と会わないひとの横顔が電車の窓にうつりこむ春
12:もうきっと会えない人の横顔の鼻とくちびるだけ覚えてる
13:くちびるが季節の色に色づいたきみは僕より四季を知るひと
14:万物が終わること知る神様は終焉ばかり考えて泣く
15:万物が描かれている静物画もの悲しげな眼窩がこわい
16:12色パステルセット赤だけが砕けてしまい描けぬ林檎
17:病床で声を殺して泣く僕の代わりに林檎さりさりとなく
18:誰もいないベッドでひっそり泣いていたテディベアの涙をぬぐう
19:不器用に青いリボンを結ばれたテディベアにも孤独はあるか
20:顔を上げこぼれる涙そのままにぼやけてにじむ不器用な青
21:雨粒がこぼれるまでのひとときを洗濯物とともに過ごした
22:雨粒が祈りのように降りそそぎすべてを傘ではじいて歩む
23:傘の外わたしが徐々に濡れていくアンパンマンでなくてよかった
24:あちこちのかけらが徐々につながってないはずの像が見えてしまう
25:ないはずのアリバイ語る探偵と僕によく似た助手の男
26:「待ってくれ戸棚の中にアリバイはついさっきまであったはずだぞ」
27:戸棚からきみの写真が出てきたが代わりに僕のカステラがない
28:雪の日の青い景色の写真たち春になったら溶けてしまった
29:雪の日にふたりで埋めたはなびらが火星で発見されたらしいよ
30:火星にも運河ならあるみたいだしそのままそこに沈んでいよう
31:そのままを維持することは難しく散らかりながら整う暮らし
32:このままを維持することがいいことかわからないまま夜が過ぎてく
33:頭上からザアザア夜が降ってきて足下すべて星空にした
34:ザアザアと雨の音だけ聴こえてるここは暗くて見えない誰も
35:暗くてもお茶をくんでこられるしプリンに名前書かなくなった
36:茶柱が真中に立てば大丈夫ポストに手紙が入ってるよ
37:癖のある文字で書かれた手紙からあなたの声が聞こえるようだ
38:見つめあい分かりあえてる心地でも背後にはあの2文字がある
39:着心地のよいシャツがほしい春の陽気を纏うような
40:そう遠くはないその日を待ちながら春の陽気を深く吸い込む
41:遠くまで行ける切符を手に入れて僕らはきっと離れ離れだ
42:二人でも生きてくことができるから別の路線の切符を買った
43:いつもとは違う路線を選ぶ朝、通勤鞄わざと忘れた
44:ずっと待ちくたびれてるよ通勤に使うため買った黒い鞄
45:雨の中とことこ歩く黒犬のしっぽのゆらめき眺める散歩
46:黒犬に死神さんと声かけて下がる眉尻めっちゃかわいい
47:死神にいつ出会ってもいいようにウォークマンを常備している
49:肋骨が折れて会社へ行けません通勤電車でかける電話
50: 紅の花がはじめて開いてく肋骨欠けた君の舌先