willow-leaf log

ひっそりこそり

短歌:6月~7月前半

イプシロンデルタの極限で触れ合う手のひら溶け合ってしまえよ
 
二人きり手つなぎ登る星見の塔 光 洪水ははるか下に
 
よりそいたかったよりそいたかった君を振り払えぬまま夕暮れ
 
なにもかも間違っていた夕暮れに草笛を吹き届けよ彼へ
 
キリマンジャロマシーン遠い未来のあなたへ大好きを伝えよう
 
十月はたそがれの国 車窓から眺めるトリックオアトリート
 
シミュラクラ機械仕掛けのシナプスはヒトもどきのパルスを発する
 
引き金を引く瞬間に夢を見る インスマウスのものどもの顔
 
気にするなだってあの娘は羽がない空へ向かって逃げちゃえばいい
 
胸の中すべてが黒になる前に朝の光の粒子になりたい
 
ピーマンの品種をすぐに言い当てる君の横顔とてもまぶしい
 
目の前の少女の背中に貼り紙で「あなたではありません」とあり
 
なにもかも大丈夫だよ目をつむりまたコーヒーにクリームを足す
 
三日月のクロワッサンを分け合って二人で食べた春の真夜中
 
完璧な機械仕掛けの時計にはかけがえのないネジばかりある
 
人生の服用量を守ること 適度に死んで依存を防げ
 
パステルの基本セットの12色赤色だけがなぜか足りない
 
シュレッダーかけそうになる思い出をやっぱりやめて引き出しに入れ
 
意識は感情の奴隷 薄桃色の折り紙をゆっくりと折る
 
赤色のバツばかりある答案を壁に貼り付け息を吐き出す
 
手元見ずキー押すことを強いられて好きが茎になったりするから
 
「仲良しはサイコーなので皆さんも仲良ししよう!」利用者の声
 
あのときの青い気持ちを採取してことこと煮詰めゼリーで食べる
 
透明で深い氷のやさしさを縋っていたら溶けてしまった
 
山を出て一人暮らしの怪物はライングループハブられている