短歌研究新人賞に応募した作品
短歌研究新人賞に応募してました。
短歌研究新人賞で予選通過作として2首掲載されてました。
— ヤナギハ (@yanagihatei) 2023年6月22日
寝落ちしてイヤホンから聞こえてくるあなたの呼吸のぬくい湿度
そうすべてはうつろいゆくものだから煙とともに吐く息の白/柳葉 了 pic.twitter.com/SQeNJnYEc8
結果は予選通過という、参加賞(くらいのものであるらしい)だったのですが、自分の歌が誰かに選ばれて紙面に掲載されるのは初めてなのでうれしい気持ちでいます。今度はもっとよりよい作品を作りたい……!そんな気持ちにさせられました。
というわけで(?)、このブログに応募した作品をアップしておきたいと思ったので、アップします。
↓ここから作品
「Long Wrong Life」
あの頃はともに生きてくはずだったイヤホン越しに聞こえた吐息
Long Wrong Life ぼんやりとしていればぼんやりと過ぎてゆくだけ
祈るような気持ちで自販機 温かいミルクティーのボタン押す
花言葉のように生きていられたら この腕で体を抱きしめる
寝落ちしてイヤホンから聞こえてくるあなたの呼吸のぬくい湿度
あの日々はおたがいさまと思ってたつりあってない天秤の揺れ
少しでもあなたの気持ち知りたくてアークロイヤルアップルミント
心臓に冷たい水が落ちていくこの感覚はいつぶりだろう
お互いに黙ったままの冷たさはドライアイスで火傷する指
咀嚼して飲み込んでいくクラッカーいろんな道がなかったことに
生煮えの気持ちは消化すらされずうらみごとがあふれてくるね
ぼんやりとふとんにもぐり寝るときの二酸化炭素濃度の高さ
蝶々のような眠気をつかみとり鱗粉を吸い落ちる暗闇
お互いにたいせつ壊しあった日のぬるいライチのほのかな苦み
スプーン一杯の贖罪すらもはねのけられて飲むポタージュ
傷つけるためにつかう悪口であなたはどう傷ついたのだろう
どのような重さの石を投げたなら当たる人らは痛くないのか
さまざまな角度で徐々にずれてってもう取り返しつかないですね
こんな気持ちになんてなりたくなかった(だけどもう)白鳥の死体
名前すらつけられなかった事件でもガラスとガラス擦れあう痛み
クレッシェンド あなたは遠くなり光の速さになってしまった
飛ぶ鳥は跡を濁さず 見あげると燕が作った燕の住処
「いつものカレー」余ったからタッパーへ 皮むき損ね指先の赤
治癒せずに残る傷跡なでながらこんな気持ちもあったのだろう
コロッケの大切さに気づかずにこれからも生きていくんだろうな
どうしてか怒りはふいに消えていき許せなさの足跡が残る
あざやかに赤や黄色が流れてく川の水面は他人事のよう
遠回りして歩くとき特有の 温度 湿り気 呼吸のリズム
死ぬ光すべてなかったことになる波打ちぎわに素足をさらす
そうすべてはうつろいゆくものだから煙とともに吐く息の白
2022短歌まとめ
2022年にTwitterなどで発表した短歌のまとめを書いておきます。
2021短歌まとめ
またねとは祈りでもある鉄柵を超えた迷惑の中にある眼
ここでもがいていくしかないらしいあの自転車を見てご覧なさい
夏はもうとうの昔に過ぎたけど三ツ矢サイダー意外とうまい
コンビニはいつでも同じ味がして救われてる?救われてるのか?
空中を低空飛行する天使たち鬼ごっとか見つめている
コンビニはいつでも同じ味がしてどこまでも続いてく気がした
この川も東京に続いていくのか東京とは大きい都市だ
スシローと幸楽苑と宝島が徒歩で行けるこの町に住む
ゲームのドット絵たち積み重なるこのまま死んじゃえばいいのになあ
ギフテッドのその後なんて知らぬまま白詰草の冠作る
撤退線 すずらんの花たちずけずけと踏み潰していくような
中身として抑えているが出てきちゃうどうすればいいどうすればいい
ダイソーに行くたび部屋がダイソーになっていくんだどうすればいい
お魚が住んでる川はたのしいな実際に見たわけじゃないけど
きっと愛し合ってるのだろうよそうわかってても身体は遠く
微糖のコーヒーを飲む ほんの少しだけでもないと意味がないんだ
バラバラにしてたピースが埋まってく夏は壊したはずなのになあ
ありえんばかりの暑さの中にいて遠くなる夏見えた気がした
願ってはいけないことが積もる春桜の花を塩漬けにする
願ってはいけないことが積もってく桜の花を塩漬けにする
踏み台にされる椅子よりリビングで使われている椅子になりたい
隣人が深夜にさわぐ隣人はともだちがいてうらやましいな
エモいことなんてなにもないじゃんねという会話がエモいってことか
ありふれている愛のことたとえば髪の毛を乾かしてくれること
生活が乱れていけばいくほどに近づいてく標準体重
ずっと声さえ聞けなかった人に会う 生きてるんならオールオーケ
そんなこと言わなくても大丈夫びわの葉は身を守るようにある
背を正し手すりを握る男性の靴底に住む微生物たち
やさしさを持ち合いながら生きている月の裏の微生物のこと
ほんものがもしもどこかにあるのならそっと手にして包みこみたい
ありふれている愛のこと蝋燭のゆらぐ炎の輝きのこと
2021年は全体的に体調が悪くてぐぬ~~と言いながら布団にこもってたんですけど来年は元気になりたいです。
短歌歌集を作りました
2018〜2020年の短歌活動のまとめとして、短歌歌集を作りました。賞に応募した作品、合同誌に寄稿した作品や、自選50首などが収録されています。
作品へのリンクはこちらです。
短歌活動自体はこれからもやっていくつもりなので、長い目で見守ってくださるととても嬉しいです。
告知でした。
2020年9月と10月の短歌
どうしようもなく春の若葉にはさまざまなものがかけられました
人間の水銀の音に比べれば鋏のそれは鈍くて重い
スケジュール帳には書いてないけれどこれから先も生きると思う
もういない人たちみんなきらいだな小枝にとまる鳥のぐらつき
すくすくと育っていくよ子供たちプール開きに反射する青
ゆっくりとチラシで箱を折っていく手にしたものは全部嘘だよ
ありふれなかったものから消えていきミニサボテンがラックに残る
雪道を振り返らずに歩いてくコートを脱げる春を求めて
運命の至る道筋さがしてるパンくずリストの深く深くへ
青空をはるかにこえた風船が割れるところを見たことがない
転職し年収半減した人の400万はどこにいったの
雨の中過ぎ去っていくポストにも祈りはきっと折り重なって
さよならは挨拶じゃなく感情でだから手を振るめっちゃ手を振る
公開をしてもよくなったから流される日誌に書かれてること
もういないかみさまいなくなったから人々たちに祈られている
2020年8月の短歌
寝たいときすぐに寝ているあの人はとても正直者なのだろう
信じるな 冬の光はすぐそこに熱源として蝋燭を持て
ゆっくりと息を吸い込み吐き出してやっと生きてる心地になった
やさしさのオブラートに包まれた言葉を飲み込み胃が痛くなる
赤色と青色が溶け混じりあう紫色の夕日やさしく
路地裏のいつもの場所の紫陽花をひさしぶりに見かけた気がした
遅すぎたことが早すぎることはなく雪はしずかに積もりつつある
日誌にはそう書いてあるはずだったひかりかかえて暮れてゆく旅
数センチ先に待ってる死のために今日も右からズボンをはいた
人が少しずつ砂へとなる海で青い破片を探して歩く
文字を書ける人すごいなあと思うガラスペンに波のような青
台風が来なかった夏すずしいと来年は覚えてるだろうか
2020年7月の短歌
そんなんでいいのと何度もくり返す人のため光れよ太陽
大切なものなんか目に見えなくてシンクに水は満たされていく
水晶に肺が侵されてた頃はささやかな嘘も言えなかった
トンネルをくぐり抜けたさき果てなく灰 生きるって最高だった
裏返しで着てるTシャツのタグをそっと触れて知らせるやさしさ
そんなことが出来ないので死んでいく色あせていくリスポン地点
息を止め手を伸ばしてはみたけれど届かなかった届かなかった
いなくなったひとならもういないひと風ではためくワイシャツの裾
自らを傷つけるため炭酸をえいと飲みほす喉が弾ける
パラライズノックスマシン起動して液化していく推理空間
二度と選ばないということは不可能で視界に入るペン回し
コンビニからの帰途で見上げた空ものすごい勢いで明けていく
ものすごい勢いで明けていく空とディスプレイを見続ける俺